2024年11月20日例会 吉永 修先生発表(予告)
演題:歯科医院における危機管理
多くの皆様の奮ってのご参加を期待しております。
演題:
長期間安定した経過を認めたコーヌスクローネ症例の報告
発表内容は50代女性、下顎両側567欠損の患者に対する、インプラント修復20年経過でした。
患者は山鹿からの来院。
治療内容は、上顎残存歯は失活歯が多く、⑧7⑥ ⑤4③ 21 12 ③4⑤ 67をクラウンブリッジにより連結固定を行い、下顎は両側4〜4の天然歯残存で左右両側に⑤6⑦のインプラントブリッジをMBにて作成し、最終補綴まで完了した。
治療完成後のメンテナンスには4年間は定期的に来られていたが、その後、来院が途絶えた。口腔内写真の撮影が苦手だったのかも、と推察した。2020年に再来院し、17年の経過で右上⑧7⑥ブリッジ部分が咬合力に耐えず歯根破折を疑わせるX-p像を認めたため、再治療開始を説得したものの、自覚症状に乏しいため経過観察となった。
20年経過後の2023年、右上65の歯根破折により来院。同意を得て抜歯を行い、歯肉の治癒後右上⑧⑤④にインプラント修復を行なった。
今後下顎はこれまで通りの安定が予想されるが、上顎については、失活歯が多く、メタルコアも太い修復が散見され、歯根破折等のリスクも考えられるため、メンテナンスをしっかりしていきたいとのこと。
参加した会員からは、隠れ2級の可能性はどうだったか質問がなされたが、1級とのこと。また、失活歯の多い患者ながら、17年間の安定は、補綴による咬合の付与が適切であったとのコメントがあった。
患者は70代半ばに達しており、今後、BP製剤を服用する場合にインプラントを応用できるかディスカッションされた。
右上のブリッジの崩壊に至る過程で右上前歯部分の歯肉退縮を生じてきていたが、右上臼歯部のインプラント修復により、咬合力の左右バランスが良好となり、前歯の咬合力が軽減され、結果、前歯部歯肉のクリーピングを認めた。
本論と外れるが、最新のBLXインプラントにおけるアバットメントのフィクスチャー内部での破折が生じたM会員からの質問に対し、添島先生がメーカーには落ち度はなく術者に責任がある、と明言されていたのが印象的であった。
発表者の準備が万端、かつ、座長の進行もスムーズで、9時20分には例会を終了でき、会員満足度も高かった。
次回例会は10月16日堀川正先生の30年経過症例の発表予定です。
8月21日は例会でした。
発表者;八田知之 先生
タイトル:歯周疾患を有する患者に対しインプラント埋入を行いIODを製作した一症例
(座長:添島義樹 先生)
患者は2017年10月初診で、上下部分床義歯の作成を希望した。
残存歯は、上顎は右上6521 左上12 下顎は右下321 左下1234であった。
右上6は重度ペリオ進行のため抜歯、下顎の右下1 左下12も中等度以上の進行あるも保存とした。その上で、基本治療終了後、患者に上顎右上64 左上46 下顎右下5 左下5にインプラント埋入後ロケーターを用いた金属床義歯を作成することの説明を行い、同意を得たため、治療を進行した。ロケーターを用いる場合、インプラントの平行性が、術後の義歯の着脱に影響するため、埋入時には、投入用ジグを言いれた状態で三次元的にドリリングをコントロールしながら埋入を完了した。右上4は若干埋入が浅かった。(上顎は全てストローマンBLT, 下顎は全てストローマンTL) 一定の免荷期間ののち、印象採得を行い、ロケーターアタッチメント内蔵型の部分床義歯を完成した。当初下顎の義歯には I barを設定していたが、患者希望により、除去した。6年経過後も上下の義歯は安定し、修理等もなく使用中である。
残存歯は右上1の垂直性骨欠損と左下2の骨支持の少なさが懸念事項である。
以上の発表に対し、治療計画が1つしかないのは、勿体無い。このような全顎症例であれば、 松 竹 梅で構想されるべきであるし、そうすることで、自ずとインプラントポジションも変化するであろうと。また、そのように幾つものプランを練ることが、臨床家としてのポテンシャルを向上させるきっかけとなるので、面倒くさがらずに、地道に取り組むこと、との指摘があった。
次回9月例会は、添島義樹先生の担当で開催予定です。
患者は63歳男性(職業:経営者)剣道愛好家。
抄録にもある通り、上顎無歯顎(左上357インプラントオーバーデンチャー)。
下顎はブリッジを含めた左右則第二大臼歯までの天然歯列。
患者は高齢にも関わらず、剣道の練習に励み、その際に上顎義歯が外れるため、前医にてIOD作成のためにインプラントを10本以上植立するも、そのほとんどがロストし、初診時には
左上3本を残していたが、そのインプラントも不安定な様相であった。
同症例を治療開始するにあたり、使用中の金属床義歯を咬合器にリマウントしたところ、右上の咬合接触が強く、左上前歯から大臼歯は咬合接触がない状態であった。
均等な接触を獲得するため、右上接触部分を削除し、左右のバランスを整えた上で患者口腔内に戻し、十分な吸着を備え、なおかつ粘膜の発赤・傷を改善する目的で、ティッシュコンディショナーを粘膜面(特に辺縁部、後縁)に十二分に塗布して患者の反応を見たところ、吸着に満足を得られたため、この義歯の粘膜面を新製義歯に活かすこととして作成を開始した。
作成にあたり、動揺する下顎前歯部の前方突出により上顎総義歯が不安定になることが予想されたため、左下1を抜歯し、3~3を抜髄の上、舌側へと歯軸を変更したZrブリッジを装着した。
粘膜調整後の旧義歯を元に作成した上顎総義歯は前歯部は接触させず臼歯部のみのフルバランス咬合を付与するも、剣道練習時の疼痛と脱離(術前ほどではない)を訴えるため、①食事用の義歯と②剣道用の義歯を1つずつ作成した。
①は前歯の接触は全て回避の上で、側方運動時の咬合接触はフルバランスで調整を終えた。
②は前歯の接触は全て回避の上で、側方運動時の咬合接触は無調整とし、吸着を良くするため、床後縁をさらに後方に伸ばした。
結果として、①は若干吸着に劣るものの、疼痛はなく、粘膜の発赤は消失した。②の使用時の脱離もなく、現在のところ患者満足は得られている。
質疑応答では、超ブラキサータイプの患者にインプラントを用いる際のインプラント選択はボーンレベルが推奨される点。旧義歯の改変は後戻りできない場合に患者トラブルとなるため、パイロットデンチャー作成をすべきこと。付与する咬合接触はリンガライズドオクルージョンがよかったのでは?etc. の指摘があった。
参加者は15名であった。
次回例会は8月21日八田知之先生の担当予定です。
using Periodontal Plastic Surgery』
患者は71歳女性 左上123ブリッジの審美障害を主訴に治療を開始した。
左上3は頬側歯肉が8mmほど退縮しており歯内療法後、MTMにより、まず挺出を試みた。
6mmほど挺出の後、左上7欠損部顎堤より結合組織移植を行い、左上2欠損部顎堤の
歯槽堤増大並びに左上3歯肉退縮の根面被覆術を行った。
左上3は歯内療法後の治癒が不良のため、根切+骨移植術を追加したところ、歯根面が再退縮したため、根面被覆術を再施行した。
最終補綴は、左上3の退縮ばかりに視点が行ったため、左上1の補綴マージンが少し見えるところは反省点であるが、元々スマイル時ローリップである患者に救われた。
支台歯である左上1左上3は元々ポジションが唇側であった上に、咬合的にも対合の接触の難しいポジションであり、せっかく施術した結合組織移植が長期に渡り安定するのは困難では、と指摘があった。また、患者自身のプラークコントロールが不良であるのも、メンテナンス時の課題であろうと、参加者から指摘された。
2月21日水曜日は例会が開催されました。
発表者:田中俊憲 先生 座長:伊東隆利 先生
タイトル:『広汎型慢性歯周病患者に根面デブライドメントを行った後に歯周組織再生療法を行った1症例』
患者は2017年初診55歳女性で、前医の歯周病治療の痛みや、治療後の歯肉退縮に不満があり、転院してきた。特に右上23間の空隙と歯肉退縮に不満が大きく、歯周外科処置にトラウマがあった。2度の再評価後、患者との信頼関係構築により、左上1は抜歯後インプラント修復、右下4、左上67は歯周外科(右下4:M-MIST)+リグロス(補填剤なし)にて再付着を獲得した。
術後3年、患者の経過は安定し、右上23間の空隙も軽度縮小、下顎前歯の根尖に及ぶ骨吸収も改善し、動揺も激減した。定期的なメンテナンスにより、現状を維持していく方針である。
参加者は12名。座長の伊東隆利先生の進行と、東先生の解説により、最新の歯周病分類と歯周外科の解説がなされました。
次回3月例会は27日水曜日開催で、嶋田英敏先生の発表(座長:添島英輔先生)を予定しております。
発表者:豊田正仰 先生(座長:東 克章 先生)にて、タイトル:「高齢患者のインプラント治療の一症例」の内容の発表がなされました。
2010年当時80歳の患者が右上欠損修復の主訴で来院し、右上57インプラント修復後、左下残存歯の問題がありながらも、家族と共に広島に移転、2018年再び熊本に戻られた時には左下の567は失われていた。
この左下の欠損症と高齢による認知症ある患者に対し、2022年左下567インプラント修復により口腔機能の改善を完了した。認知症状の悪化はなく、維持されたとのことで、年齢93歳での歯科治療は成功であった。
質疑応答では、術前ワックスアップと完成時の比較や、パウンドラインと上部構造、3本埋入インプラントの真ん中埋入部位のロストしやすい事等がディスカッションされた。
認知症の患者は今後増加することが考えられるため、歯科治療術前の評価と術後の評価により、認知症状がどう変化するのかについての今後の調査研究が必要と思われた。
参加者は9名であった。
11月例会は鎌田政彦先生によるマイクロエンドの発表がなされる予定です。
6月例会は、添島英輔先生の担当(座長:三村彰吾先生)で開催されました。
「薬物性歯肉増殖症を伴う重度歯周炎患者にインプラント応用した1症例」とのタイトルにて発表がなされニフェジピンによる歯肉の副反応について、内科主治医とのコミュニケーションと歯周病治療両面からの改善と、その後の修復治療につきディスカッションがありました。
東先生から、高血圧治療の内服薬変更もさることながら、バイオフィルムの継続的除去を徹底することが重要との見解が示され、3か月ごとに再評価を行い、歯肉縁下へのアプローチの是非につき意思決定を行うことが、基本的な流れであると提言されました。
補綴設計については生活歯の歯髄を残したままクラウンを提供するなど、秀逸な計画でした。
その一方で、下顎残存歯の予知性を考慮すればインプラントの本数や配置を工夫することでより長期安定性が高まったのではとの見解を田中副会長が示しました。
参加者は14名でした。
例会終了後は天草にて発表者と座長の慰労がなされました。
次回例会は7月19日を予定しております。
『顎堤吸収の著しい可動粘膜上のインプラント磁性アタッチメント義歯』の演題にて、古田洋介先生の発表がありました。
当日は15名の参加者にて無歯顎のリハビリテーションにつき、ディスカッションがなされ、インプラント磁性アタッチメントの効果について様々な角度からの検証がなされました。
例会後は、恒例の居酒屋『天草』にて、古田先生を囲んでの食事会があり、ざっくばらんな臨床の意見交換に花が咲きました。
次回は6月21日に、添島英輔先生発表の例会を予定しております。